一昔前なら「初めてのキスはレモン味」というフレーズが、一周回ったギャグとして機能していたけど、今となっては一周半して180゜向こう側に行ってしまっていて、笑って良いのか、クエスチョンマークを出せば良いのかよく分からない。ちなみに私のファーストキスの味は無味だった。最近でもそんなに味を感じる事は無い。ただ恋人からはたまに「キスすると煙草臭い」という指摘を受ける。もし、今、私が小学校にでも潜り込んでそこの生徒の唇を奪ったら、その子にとってのファーストキスの味は「煙草味」という事になるんだろうな。あまり、ロマンティックじゃないし、そもそも、ポリス沙汰になってしまう時点で色々問題有りだ。味というのとはちょっと違うけれど、この前テレビで昔のドラマの再放送を見ていたら、ビッチっぽい顔の女性俳優とキスをした主人公の冷たい二枚目っぽい男性俳優が、その女性と別れた直後にハンカチで唇を拭う、というシーンがあって、ちょっと感心した。キスをした直後に唇を拭いたくなる、っていう心境って、好きじゃない人とキスしたことが無いと分からない。
私の場合、初めてのキスからして特に好きじゃない相手となりゆきで、という形だったので、特に良い思い出では無い。と言うより、むしろ無かった事にしてしまいたい。そんな相手に興味本位で唇を許してしまった昔の自分を殴りつけてやりたいぐらいだ。ただ、実際に殴りつけた所で、あれから結構な時間が経った今でも、そんなに好きじゃない相手とキスをする事が有ったりする私から、殴りつけられた昔の私としても、多分納得行かないんだろうなあ、って思う。そんな詮無い空想。